2024年01月05日
Eさん一年目のRDI取り組みの様子
パンジーⅡのEさんは通所1年目に日中活動の中で集中的にRDIに取り組みました。その時に支援者とどんな活動に取り組んだかを振り返ってみます。
00:00~「番重を運ぶ」
Eさんはすぐにこちらの意図や要領を察してくれて一緒に行うことができました。
途中で番重を持って支援者が立ち止まると駆けつけ、一緒に持ちました。
支援者とともに何かをする時間という意識を本人が持ってくれているように感じます。
00:54~「パズルをする」
最初の段階では一人で行っています。時折支援者の私から手伝うサインを送るが一人でしようとします。
ここで心がけたことはあまり支援者側の手伝いアピールが強くなりすぎないことです。
途中からチラチラこちらを見て意識してくれるようになり手を取ってくれました。
一度こちらが手伝うとEさんもそちらのほうが早いと思ったのか、あまり自分でせずに
頼るようになりましたが、全てこちらがしてしまうのではなくあくまでEさんに
パズルをしてもらうことを意識しました。
03:08~「お茶を一緒に入れる」
ピッチャーを一緒に持つがEさんの手にはあまり力は入っていませんでした。
こちらも力を抜くとEさんがそれに気づき、少し力を入れて持ってくれました。
お茶を入れ終わる前に飲んでしまいそうになりましたが、最後にピッチャーをテーブルに置くところまで一緒にしてもらいました。
二度目は役割を変えてEさんがピッチャーを持って私がコップを持って注いでもらう形にしました。
この日はなかなか集中できていない様子でもっと関わって欲しそうに感じられました。
04:46~「ハンガーにウレタンをつける」
終始支援者の指示が多いのが反省点です。榎本さんは落ち着いて取り組んでいて、支援者側がウレタンやハンガーを持ち替えてもそれにすぐ対応していました。
06:45~「一緒に揺れる」
Eさんはパンジー通所当初はなかなか関係が築けず一人で過ごしてしまうことが多かったように思います。
RDIを取り組むことで日々の活動の中でも支援者を意識してくれることが増えました。
動画のように体を預けてリラックスをしてもらえる信頼関係もできてきました。
今後もともに様々な活動をして信頼関係を作り、それを拡げていこうと思っています。
文:パンジー支援者 横山
その後の様子は「Eさんの変化について(2020年11月17日記事)」に続く。
2020年11月17日
Eさんの変化について
2018年の4月からパンジーⅡに通っているEさんは今年で3年目を迎えました。
支援学校を卒業して今年で21歳になります。重度の自閉症と診断されています。
通所が始まったころのEさんは私たちとの関係が上手く築けず、服を脱いでしまったり、1人で個室にこもってしまったり、パンジーⅡで過ごしていくうえで課題となることが多かったように記憶しています。軽作業をする上でも私たちに手を握って欲しくて、もっと別の関りが欲しくて自分本位になりすぎて、なかなか軽作業に取り組めないことも多かったです。
そんな中でRDIコンサルタントの池下さんに相談を開始し、何人かの支援者で取り組みを始めました。
支援者とともにお茶をコップに入れたり、物を運んだりを続けていくうちに、椅子に座って軽作業にも取り組むことができるようになりました。最初はどのような支援が必要なのか迷ってしまうこともありましたが、RDIの取り組みを続けていく中で、Eさんは私たちの思いや行動を意識してくれていることがわかりました。
2020年9月現在。以前のように対応を迷う行動はほとんど無くなり、Eさんは共に歩いている支援者が立ち止まると、気遣って立ち止まるなど、今まで以上に支援者を意識するようになっています。
今後もどんどん変化していくEさんと活動の幅を広げたり、自立に向けて共に歩んでいきたいと、強く感じました。
2020年03月12日
新しく来たUさんのこと
この4月からパンジーに新しく通所を始めるUさん。34歳。
自閉症、アスペルガー症候群、AD/HDなどの広汎性発達障害、
また強度行動障害を持ち、現在は日中に別の事業所へ通所されています。
行動の特性として、多動性が高く同じ場所に座っていることが難しい、
こだわりが強く行動パターンを変える事が難しい、予定の見通しが難しく
落ち着いて過ごせない事が多いといった報告を受けています。
パンジーへの通所を開始する4月に向け、RDI認定コンサルタントである
池下沙祐里さんに取り組みを見てもらいながら、日中で体験実習を始めました。
Uさんが安心して過ごす事ができる環境作り、そして職員間で支援を統一し、
Uさんとの関係を構築していくことを目指します。 パンジー支援者: 北田
「RDI認定コンサルタント 池下沙祐里さんの報告」
今日はUさんの第3回目の実習でした。2回目からは作業もしているそうです。
パンジーでは、RDI(対人関係発達指導法)という自閉症の療育プログラムを
取り入れて日々支援をしていますが、この日もそのアプローチが活かされていました。
ハンガーの作業では、支援者がUさんに単に作業をさせているのではなく、
「ガイドされた参加」でペースを調整しながらしています。
Uさんが一人で作業をすると、どんどんペースが速くなったり、興奮気味になって
しまいますが、ガイドがリードすることで、双方に心地よいペースを保っています。
Uさんのガイドされた参加(ハンガーの作業)
次の場面は、昼食を待つシーンです。
Uさんはお昼が楽しみでそれまでも時々厨房をのぞき込んでいましたが、
作業が終わり片付けが始まると、いよいよ落ち着かず、厨房と作業スペースの間を
行ったり来たり配膳がまだかと気にする様子が見られます。
そこで、作業をしていた支援者と厨房近くで並んで待つことにチャレンジしてもらいました。
Uさん「ガイドされた参加」で並ぶ
RDI(対人関係発達指導法)の「ガイドされた参加」というと何か作業を
しなければいけないと思う方がいるかもしれませんが、遊びの中でも、
日常のルーティーンの中でも「ガイドされてすべきこと」は山のようにあります。
Uさんは、一人ではじっとしていられませんが、支援者と並ぶことで、適切に待つことができました。
RDIでは「edge + 1」(エッジプラスワン)という言葉がよく出てきますが、
“一人ではできないちょっと難しいこと”を、ガイドにリードされてチャレンジし、
少しずつ成長していくというのが、定型発達の子どもたちの中で日々起きていることです。
今回の場合、厨房の前で並んでいた方が気になる食事が近いことが見てわかるので、
Uさんの自閉症の特性から考えても、見通しが持ちやすくよかったと思います。
その後、また別の場面では、別の支援者に誘われて、一緒にカゴを運んだり、
机や椅子を元の場所に戻したり、ヴァリエーションに富んだいろいろな
「ガイドされた参加」の活動をされていました。
Uさん「ガイドされた参加」でカゴを運ぶ
こうした活動を通して、Uさんが人と一緒に動くことや何かをすることの楽しさや
面白さに気づき、世界や人に対する理解の枠組みをアップデートしていくことが、
柔軟性の獲得であったり、将来のQOLにつながるのだと思っています。
2017年08月09日
ガイド関係発達研究会主催 第4回実践報告会&講座
「問題行動とRDI」
今回のテーマは、これまでの参加者からのアンケート結果で意見の多かった、問題行動やこだわりについての講座と実践報告が行われました。
前半はRDI認定コンサルタント池下沙祐里さんによる、「RDIから見た問題行動の捉え方」についての講座でした。
これまでの療育では【変化のない生活にしてパニックを減らそう】と言う考えだったのに対し、RDIの発想では【世の中に変化があるのは当然。時にはその変化すら楽しんで】という考え方をする。また、【指示を理解して従えるように】ではなく、【時には指示に逆らえるように】という発想で、本人の意思決定と自発的に楽しむことを大事にして取り組んでいくという話がありました。
同じボール遊びをするにしても、プロセスかパフォーマンスかどちらを目的にするかということがあります。プロセス志向では、①楽しんでいるか、②自分から投げているか、③次は2人でどんなゲームをしよう、といった考え方をします。
一方パフォーマンス志向では、①正確に投げたか、②次はもっと遠くに投げさせてみよう、③受けるのもできたほうがいい、という結果主義となります。
実践のビデオでは、ボール投げに乗り気でない様子の子どもに、指示するのではなく支援者がひとり言のように「何々しようかなぁ」と口に出す様子がありました。そうする事で本人が自分で考えて行動することを引き出す関わりを実践している内容でした。
スキルは手段に過ぎず、プロセス(過程)からモチベーション(意欲)、そしてコンピテンス(うまくやれると言う感覚)に繋がっていくと考える。モチベーションの発達を阻害するものとして、褒めてやらせることや、叱ってやらせることなどの外からの報酬、また「誰誰が見ているからやめなさい」と言った価値判断があるという話がありました。
プログラム2つ目は、経験共有からモチベーションへ繋げる事を目指し、カルタを使った経験共有の取り組みをする大人の実践報告が紹介されました。
当事者Iさんはパンジーに通所するようになった当初、支援者が声をかけても反応がないことが多かった事や、周囲の人に関心がないという様子からRDIに一緒に取り組むことになったという経緯が紹介されました。
取り組みのビデオを撮り始めた最初の頃は、支援者が頻繁に褒めたり、やらせているという印象が感じられるものでしたが、少しずつ支援者の関わり方を変えていく実践の様子が紹介されました。支援者が「〇〇が名産の都道府県はどこだったかなぁ?」とひとり言のようにつぶやくと、Iさんがカルタを見て自発的に答えるように変わっていく様子が映像にはありました。
プログラム3つ目は、自閉症の子どもとお母さんによる、非言語コミュニケーションを用いた取り組みから、お子さんが自分で考える力を引き出していく実践報告の様子が紹介されました。
取り組みのビデオでは、母親と子どもが向かい合いボールをお互いのお腹に挟んで運ぶと言う遊びをしていました。しかしすぐに途中でその場から離れてしまう様子がありました。関わりの様子は、母親が子どもにさせてしまっているという印象がありました。
続いて人生ゲームに取り組んでいるビデオでは、子どもがせっかくお母さんの方を見て参照しているのに、お母さんがお金の計算方法を説明したことで、子どもはその後一人で準備を進めてしまったという場面でした。
再チャレンジのビデオでは、母親ができる限り言葉を出さずに、非言語コミュニケーションを用いての関わりが実践されていました。母親から言葉での説明がない事でお子さんは戸惑っている様子はありながらも、母親の表情や身振りをよく参照し、指差しのヒントを見つけてやる気を出していく様子がビデオの中でありました。
取り組みを続ける以前は、子どもと目が合わなかったと言うお母さんでしたが、最近では学校に迎えに行った際にお子さんから目を合わせて微笑むなどの変化が見られるようになったそうです。
また友達との関わりが増えたことや、兄弟に興味を持つようになったこと。そしてお母さん自身も子どものことがかわいいと思えるようになったと言う報告がありました。
プログラム最後では、重度の自閉症の人のケース検討会が行われました。当事者Tさんの紹介があり、続いて問題行動から現在支援の上で困っていることが紹介されました。
事例検討1つ目の課題は、グループホームにおいて多飲水による問題行動について、6人組のグループに分かれ検討課題について意見を出し合いました。
・制止するのではなく「〇〇の後飲みましょう」と伝える
・言葉ではなく首振りなどの非言語コミュニケーションで伝える
・その他の余暇を過ごす方法を考える
などの意見がそれぞれ出ました。
大事なことは、なぜそういう行動をするのか?を考えること。不安や注意引きなど一つ一つ理由を考えていくと、支援者が気付いていなかった答えを引き出せることがあるという事でした。
2つ目の課題は、食べ物を掻き込むようにして勢い良く食べてしまい誤嚥の危険性があるということでした。再びグループごとに意見を出し合いました。
・嫌いなものは食べたくないと本人が言えるようにする
・本人が希望を言える環境・関係性を作る
などの意見が出ていました。
Tさんの苦手な部分にチャレンジしたこと、また支援者側もこれまで気付けていなかったTさんの特性や関わり方を改善したことが良い結果に繋がった。
大きく変化させるのではなく、少しの変化、ハードルを上げ過ぎず、当事者本人そして支援者のモチベーションに繋げて継続することが大切。問題行動だけを見るのではなく、その人を見ることで問題行動がなくなるという事を実感できたという報告でした。
今回レポートを担当していて感じたことは、支援者側の意識を変えてみること、マインドフルになる必要があるのは支援者の方だということでした。
また取り組みとは違う場面で、今まで視線が合わなかった当事者がこちらを見て笑うことがあったという話や、他の人に興味を持つようになってきたという報告が寄せられていました。こういったところに、考える力やモチベーションを引き出すという取り組みが活きてくるのだと実感しました。
レポート:北田 徹