2017年08月09日

ガイド関係発達研究会主催 第4回実践報告会&講座

「問題行動とRDI」

今回のテーマは、これまでの参加者からのアンケート結果で意見の多かった、問題行動やこだわりについての講座と実践報告が行われました。

前半はRDI認定コンサルタント池下沙祐里さんによる、「RDIから見た問題行動の捉え方」についての講座でした。
これまでの療育では【変化のない生活にしてパニックを減らそう】と言う考えだったのに対し、RDIの発想では【世の中に変化があるのは当然。時にはその変化すら楽しんで】という考え方をする。また、【指示を理解して従えるように】ではなく、【時には指示に逆らえるように】という発想で、本人の意思決定と自発的に楽しむことを大事にして取り組んでいくという話がありました。

同じボール遊びをするにしても、プロセスかパフォーマンスかどちらを目的にするかということがあります。プロセス志向では、①楽しんでいるか、②自分から投げているか、③次は2人でどんなゲームをしよう、といった考え方をします。
一方パフォーマンス志向では、①正確に投げたか、②次はもっと遠くに投げさせてみよう、③受けるのもできたほうがいい、という結果主義となります。
実践のビデオでは、ボール投げに乗り気でない様子の子どもに、指示するのではなく支援者がひとり言のように「何々しようかなぁ」と口に出す様子がありました。そうする事で本人が自分で考えて行動することを引き出す関わりを実践している内容でした。

スキルは手段に過ぎず、プロセス(過程)からモチベーション(意欲)、そしてコンピテンス(うまくやれると言う感覚)に繋がっていくと考える。モチベーションの発達を阻害するものとして、褒めてやらせることや、叱ってやらせることなどの外からの報酬、また「誰誰が見ているからやめなさい」と言った価値判断があるという話がありました。

プログラム2つ目は、経験共有からモチベーションへ繋げる事を目指し、カルタを使った経験共有の取り組みをする大人の実践報告が紹介されました。
当事者Iさんはパンジーに通所するようになった当初、支援者が声をかけても反応がないことが多かった事や、周囲の人に関心がないという様子からRDIに一緒に取り組むことになったという経緯が紹介されました。
取り組みのビデオを撮り始めた最初の頃は、支援者が頻繁に褒めたり、やらせているという印象が感じられるものでしたが、少しずつ支援者の関わり方を変えていく実践の様子が紹介されました。支援者が「〇〇が名産の都道府県はどこだったかなぁ?」とひとり言のようにつぶやくと、Iさんがカルタを見て自発的に答えるように変わっていく様子が映像にはありました。

プログラム3つ目は、自閉症の子どもとお母さんによる、非言語コミュニケーションを用いた取り組みから、お子さんが自分で考える力を引き出していく実践報告の様子が紹介されました。
取り組みのビデオでは、母親と子どもが向かい合いボールをお互いのお腹に挟んで運ぶと言う遊びをしていました。しかしすぐに途中でその場から離れてしまう様子がありました。関わりの様子は、母親が子どもにさせてしまっているという印象がありました。
続いて人生ゲームに取り組んでいるビデオでは、子どもがせっかくお母さんの方を見て参照しているのに、お母さんがお金の計算方法を説明したことで、子どもはその後一人で準備を進めてしまったという場面でした。
再チャレンジのビデオでは、母親ができる限り言葉を出さずに、非言語コミュニケーションを用いての関わりが実践されていました。母親から言葉での説明がない事でお子さんは戸惑っている様子はありながらも、母親の表情や身振りをよく参照し、指差しのヒントを見つけてやる気を出していく様子がビデオの中でありました。

取り組みを続ける以前は、子どもと目が合わなかったと言うお母さんでしたが、最近では学校に迎えに行った際にお子さんから目を合わせて微笑むなどの変化が見られるようになったそうです。
また友達との関わりが増えたことや、兄弟に興味を持つようになったこと。そしてお母さん自身も子どものことがかわいいと思えるようになったと言う報告がありました。

プログラム最後では、重度の自閉症の人のケース検討会が行われました。当事者Tさんの紹介があり、続いて問題行動から現在支援の上で困っていることが紹介されました。
事例検討1つ目の課題は、グループホームにおいて多飲水による問題行動について、6人組のグループに分かれ検討課題について意見を出し合いました。
・制止するのではなく「〇〇の後飲みましょう」と伝える
・言葉ではなく首振りなどの非言語コミュニケーションで伝える
・その他の余暇を過ごす方法を考える
などの意見がそれぞれ出ました。
大事なことは、なぜそういう行動をするのか?を考えること。不安や注意引きなど一つ一つ理由を考えていくと、支援者が気付いていなかった答えを引き出せることがあるという事でした。

2つ目の課題は、食べ物を掻き込むようにして勢い良く食べてしまい誤嚥の危険性があるということでした。再びグループごとに意見を出し合いました。
・嫌いなものは食べたくないと本人が言えるようにする
・本人が希望を言える環境・関係性を作る
などの意見が出ていました。

Tさんの苦手な部分にチャレンジしたこと、また支援者側もこれまで気付けていなかったTさんの特性や関わり方を改善したことが良い結果に繋がった。
大きく変化させるのではなく、少しの変化、ハードルを上げ過ぎず、当事者本人そして支援者のモチベーションに繋げて継続することが大切。問題行動だけを見るのではなく、その人を見ることで問題行動がなくなるという事を実感できたという報告でした。

今回レポートを担当していて感じたことは、支援者側の意識を変えてみること、マインドフルになる必要があるのは支援者の方だということでした。
また取り組みとは違う場面で、今まで視線が合わなかった当事者がこちらを見て笑うことがあったという話や、他の人に興味を持つようになってきたという報告が寄せられていました。こういったところに、考える力やモチベーションを引き出すという取り組みが活きてくるのだと実感しました。

レポート:北田 徹