体験者の声

パンジー / 北田 徹

2014年の11月より、RDIの取り組みを続けているパンジーのMさん。
僕が一緒にRDIを始めたいと思った理由は、Mさんが日頃からパターン的な思考で行動している点が多いという事でした。また、次の行動に早く移りたいと気が焦り、予定がどんどん前倒しになって行くという事もよくあります。
例えば、パンジーの送迎車に乗る時は全速力で走って行く事を決めていたり、
また室内で上靴に履き替える手間を省く為に 常に土足でしか過ごせなくなってしまったり、その他にも ショートステイでは夜にベッドへ入ったのと同時に翌日の服に着替えてしまうといった事などがあります。
もう少し、Mさんが柔軟さというものを持つ事ができたら。
もう少し、Mさんが周りに歩調を合わせる事ができたなら。
そうなって欲しいと思った事が、一緒に挑戦して行きたいと決めた理由でした。

取り組みを始める前に、普段の共同作業の様子をビデオに撮影しました。
2014年11月19日(水)

あとで客観的に映像を確認すると、支援者である僕が淡々と作業を進める様子が目立ち、Mさんの表情も硬く、ただ目の前の作業を終わらせようとしているような印象を受けました。お互いの視線も殆ど合う事なく、「一緒に楽しく」という言葉とは程遠い関係性に見え、僕自身が驚きました。

コンサルタントである林さんに映像を見てもらい、支援者の関わり方、支援者はどうすれば良かったのか?という事についてフィードバックを行いました。
そこで気付いた点が、
・スピードが速すぎる。共同という意識が感じられない。
・作業を淡々と進めていて、Mさんを待つ事ができていない。
・支援者が指示している上、意思表示が分かりにくい。
という点でした。

改善点をまとめると、
・ゆっくりと行い、経験の共有を意識する。
・指示ではなく、Mさんに考えて動いてもらう。
・非言語コミュニケーションを使う。できた時はスポットを当てて褒める。
という点です。
取り組む共同作業は ビー玉の入ったバケツから支援者が1つ1つ取り出して、それを別のバケツへ一緒に入れて行くというものです。
ただビー玉を移動する作業という訳ではなく、同じビー玉を一緒に見て一緒に感じる事、相手の様子や状況を見て考えてもらう事、表情で会話をする事など、非言語コミュニケーションを大切にし、Mさん自身に考えて行動を決めてもらう事を意識して取り組みました。

2015年3月20日(金)

2015年5月19日(火)

この取り組みを日々続けていく中で徐々に、本当にゆっくりではありますが、Mさんの行動に変化が見られるようになってきました。
ビデオでは、支援者と一緒に行う共同作業を楽しむように前向きな笑顔が見られるようになってきたり、こちらが一緒にしたいと思っている事をMさんが表情や動きから読み取ってくれた瞬間が分かるようにもなってきました。
支援者の首を振る仕草や手振りを見て うなずいてみたり、タイミングを合わせて一緒にビー玉をバケツに入れる共同作業もできるようになってきました。
また支援者側も、Mさんに指示をするのではなく待つ事ができるようになり、伝えたい思いを表情に出すといった非言語コミュニケーションを多分に使って、Mさん自身に考えて決めてもらうという事が少しずつできるようになってきたように思います。

ここまで、約半年の時間が流れています。フィードバックを繰り返しながら、ゆっくりゆっくり少しずつの変化が、Mさんと支援者の両方に現れてきました。
Mさんがこんな風に人と関わったり、相手の動きを見るように変わってきたのは、ガイドである僕自身が変わる事ができたという点も大きかったと思います。
Mさんのように差し迫って深刻な問題がないという人ほど、これまであまり注目が当たらずに関わりを見直す機会が失われてきたケースがあると思います。
そして同時に周りの支援者が過剰に手伝ったり 指示してしまう事で、当事者本人が自分で考える機会を無くしてきてしまったのではないかと、今振り返ればそう思います。

先日、Mさんのお父さんからあるお話を聞くことができました。
Mさんはこれまで30年以上、家族と一緒に買い物に出掛けると 決まって同じ商品のコーラを手に取り急いでレジまで駆けて行くという行動があるそうですが、ここ最近では「たまには他の物も選んでみたら?」というお父さんの言葉に応えて、Mさんは商品棚にぐるっと目をやり、持っていたコーラを売り場に戻すと別のオレンジジュースを手に取る事ができたそうです。
ご両親ともに、Mさんがいつもの決まった商品を取りやめて 別の物の中から選ぶという行動を初めて見たとの事で、とても驚き、そしてとても嬉しかったとおっしゃっていました。

Mさんはこれまで自分が生活しやすいやり方で過ごしてきて、自分が持っている能力を使わずに苦手な事や難しい方法を避けてきたのではないかと思います。
僕はMさんに社会的なスキルや やり方を獲得してもらう事に焦点を当てがちになっていましたが、Mさん自身が考えて行動を決められるように支援する事が最も大切なのだという事を理解できた時、僕は初めてRDIの心髄というものに触れられた気がしました。

この実践とフィードバックの繰り返しは僕が奮闘した記録であり、今後の自分を支えるお守りのような役目を果たしてくれるのではないかと思っています。
いつか支援に行き詰まった時の、振り返りの原点にしたいと思います。

E.I さん

RDIを初めて3年目になります。子供は重度の自閉症、精神延滞、知的障害、てんかんの発作もあり会話をする事もできません。もうすぐ4歳になる弟もいます。

最初お話を聞いた時すごく興味を持ちました。ですがその半面できるかな?と不安もありました…。子供と関わる時は、必ず弟もセットだし、弟に接するようにすれば大丈夫と聞きやってみようと思いました。

それと子供の療育だと正直しんどいなと思いましたが、親の方だったので大丈夫だろうと…。

いざやり始めてみると、やろう やろうという気持ちが先走り、無理 無理…となった事も度々。生活にも支障がでてきた時は、少し休憩させてもらいました。でも1年半くらいしたら今まで空回りしていた事がうまくいき、色々な事がおちついてきました。

これまではパニックが出ない様に子供にコントロールされていた事が多く、それを親のリードにしていくのに時間はかかりましたが、気をつければリードできる様になり、大変だった事も前はこうだったなと、振り返る事もできる様になりました。少し精神的にしんどくなった時など、相談にものってもらえて、それで乗り越えられたかなと思います。

今は色々選択肢もあるので、無理せず実践していってます。今でも、もちろんうまくいかなかったりパニックになったりする事はありますが、違う視点からみたり、様子をみたり、自分に余裕がない時は休憩したりしています。これからも無理なくRDIをとりいれて、子供と関わっていこうと思っています。

T.M さん

RDIをはじめて、一緒にいる人が楽しく過ごすことができているかに注目できるようになって、今まで気がつかなかった小さな幸せに気付くようになりました。その楽しかった時間が嬉しくって「これを一緒にしたいな」と思うようになりました。私が考えて誘いかけたことに相手が応じてくれなくても、「また今度一緒に何かしようね。何にするか考えておくよ。」と心の中で思っています。そんな気持ちでやっています。