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今回のテーマは、「マインドセット」
関わる側の人がどういった心構えをもってお互いに成長できるかを考える講座、実践報告と参加者で一緒に考えるグループワークが行われました。
RDI認定コンサルタント池下沙祐里さんによる講座「“ガイドされた参加”のマインドセット」ではいきなり「“こころ”って身体のどこにあるの?」という哲学的な話で始まりましたが普段の生活の中から見てとれる“関わり”の中でどういった気持で接しているか、それがどういう形で表れるかなどわかりやすく説明されました。
また「成長促進型マインドセット」と「問題予防型マインドセット」の違いについて、「新しいチャレンジを試みつつ一緒に成長していくこと」と「現状の問題を回避するために予防線を張ってしまう」という2つのマインドセットについても講義が進められました。
講義後半では「マインドセット判定ゲーム」として参加者の方々が質問に答えて自分のマインドセットを振り返るということも行いました。それぞれの結果について評価をしていき自分がどういった心持ちで接しているか、どう表現しているかを考える良いきっかけにもなりました。
実践報告は2例。1つ目は今年からパンジーに通所されている知的障害と自閉症スペクトラム障害を持つ成人男性の
Kさんとの関わりの中で支援者のマインドセットにスポットを当てて報告がありました。
最初は支援者の緊張感が伝わりKさんも落ち着けず、支援者がフォローしようと指示を出してしまうことでさらに関係性が悪化してしまうという悪循環でした。まだ関係性が築けていないうちに指示を出してしまいKさんも受け入れられない状況です。
次に「同じ場所で一緒に過ごす」ということを目的に過ごし、その中で一緒にブロック遊びをしました。Kさんも少し落ち着いた様子で一緒の空間にいることが出来ていますが、ここでもまだ支援者が指示を出してしまっています。どうしても関わりを持とうと焦ってしまうようです。
最後はとにかく「指示を出さない」をテーマとして一緒に過ごします。すると支援者もKさんを意識しすぎることがなく自然に関われました。Kさんもさらに穏やかな表情が伺えます。
支援者も「最初は関わりが難しいと思っていてついついこちらの要求を伝えるために指示を出してしまっていた。心の持ち方を変えることで、その姿勢がKさんにも伝わり関係性が変化することで自分でも出来るんだと思えるようになった」と言っています。
2つ目の事例報告はきっずパンジーに通ってい自閉症のTくんと支援者の関わりです。
Tくんとバス停からパンジーに向かうまでの道のりでの関わりについてです。
Tくんは他の子ども達と一緒に歩きますが自分のペースで歩いたり急に走りだしてしまう事がありました。支援者のリードで一緒に歩く事を通して「ガイドされた参加関係」を作ることを目指します。
まずは他の子たちの後ろから支援者と一緒に歩きますがこちらも支援者が緊張しているのがビデオからも伝わってきます。会話もTくんがコントロールしています。と急に走り出してしまいました。
次はもう少し緊張感を持ち、しっかりと横についてゆっくりと歩く事を心がけて挑戦です。
まだお互いの距離感や信頼関係がかみ合っていないようですが、少しづつ一緒に歩く事が出来るようになってきました。
三度目にはお互い余裕が出て来ています。「一緒に歩いている」という感覚を持てて来てるのではないでしょうか。
最後にグループワーク「“マインドセットに”気づこう」です。
参加者で4つのグループを作り3つの事例で「その時どうするか?」「どう考えたから、そうしたか」「今後どうしようと思うか」をグループ内で話し合いました。
それぞれ親視点、支援者視点、自分視点といった3つの事例について話し合いました。
1つ目の親視点。「楽しみにしていたUSJに連れてきたが、子どもが待ち時間に耐えられずパニックに!!」
2つ目の支援者視点。「明日から偏食が多く、気分が乗らないと食事が進まない当事者の食事介助担当になった」
3つ目の自分視点。「恋人と些細なことから大げんかし、別れ話に発展してしまった」
それぞれ活発な意見があり、この中でも成長促進型と問題予防型の意見がたくさん出され大変盛り上がりました。みなさん日頃の生活の中で色々と挑戦していることが話され貴重な意見を聞けました。
今回テーマ「マインドセット」について、関わる側が変わることで状況が変わってくることが良く分かりました。その中で如何に「成長促進型マインドセット」を持てるかがこれからのチャレンジだと感じました。
レポート:北村 賢治
第5回 RDI 実践報告会&講座のご案内です。ぜひご参加下さい。
今回のテーマは【ガイド関係 のマインドセット】
支援する側、される側、両方がいい関係を作れる心の持ち方について学んでみませんか?
ぜひご参加下さい。
日時:2017年10月17日 13時から16時
場所:クリエイティブハウスパンジーⅢ(東大阪市中新開2丁目10-16)
参加費: 研究会員1000円 非会員2000円
お申込み:メールアドレス kids-pansy@pansy-net.or.jp
(詳細は添付のチラシをご覧ください↓)
「問題行動とRDI」
今回のテーマは、これまでの参加者からのアンケート結果で意見の多かった、問題行動やこだわりについての講座と実践報告が行われました。
前半はRDI認定コンサルタント池下沙祐里さんによる、「RDIから見た問題行動の捉え方」についての講座でした。
これまでの療育では【変化のない生活にしてパニックを減らそう】と言う考えだったのに対し、RDIの発想では【世の中に変化があるのは当然。時にはその変化すら楽しんで】という考え方をする。また、【指示を理解して従えるように】ではなく、【時には指示に逆らえるように】という発想で、本人の意思決定と自発的に楽しむことを大事にして取り組んでいくという話がありました。
同じボール遊びをするにしても、プロセスかパフォーマンスかどちらを目的にするかということがあります。プロセス志向では、①楽しんでいるか、②自分から投げているか、③次は2人でどんなゲームをしよう、といった考え方をします。
一方パフォーマンス志向では、①正確に投げたか、②次はもっと遠くに投げさせてみよう、③受けるのもできたほうがいい、という結果主義となります。
実践のビデオでは、ボール投げに乗り気でない様子の子どもに、指示するのではなく支援者がひとり言のように「何々しようかなぁ」と口に出す様子がありました。そうする事で本人が自分で考えて行動することを引き出す関わりを実践している内容でした。
スキルは手段に過ぎず、プロセス(過程)からモチベーション(意欲)、そしてコンピテンス(うまくやれると言う感覚)に繋がっていくと考える。モチベーションの発達を阻害するものとして、褒めてやらせることや、叱ってやらせることなどの外からの報酬、また「誰誰が見ているからやめなさい」と言った価値判断があるという話がありました。
プログラム2つ目は、経験共有からモチベーションへ繋げる事を目指し、カルタを使った経験共有の取り組みをする大人の実践報告が紹介されました。
当事者Iさんはパンジーに通所するようになった当初、支援者が声をかけても反応がないことが多かった事や、周囲の人に関心がないという様子からRDIに一緒に取り組むことになったという経緯が紹介されました。
取り組みのビデオを撮り始めた最初の頃は、支援者が頻繁に褒めたり、やらせているという印象が感じられるものでしたが、少しずつ支援者の関わり方を変えていく実践の様子が紹介されました。支援者が「〇〇が名産の都道府県はどこだったかなぁ?」とひとり言のようにつぶやくと、Iさんがカルタを見て自発的に答えるように変わっていく様子が映像にはありました。
プログラム3つ目は、自閉症の子どもとお母さんによる、非言語コミュニケーションを用いた取り組みから、お子さんが自分で考える力を引き出していく実践報告の様子が紹介されました。
取り組みのビデオでは、母親と子どもが向かい合いボールをお互いのお腹に挟んで運ぶと言う遊びをしていました。しかしすぐに途中でその場から離れてしまう様子がありました。関わりの様子は、母親が子どもにさせてしまっているという印象がありました。
続いて人生ゲームに取り組んでいるビデオでは、子どもがせっかくお母さんの方を見て参照しているのに、お母さんがお金の計算方法を説明したことで、子どもはその後一人で準備を進めてしまったという場面でした。
再チャレンジのビデオでは、母親ができる限り言葉を出さずに、非言語コミュニケーションを用いての関わりが実践されていました。母親から言葉での説明がない事でお子さんは戸惑っている様子はありながらも、母親の表情や身振りをよく参照し、指差しのヒントを見つけてやる気を出していく様子がビデオの中でありました。
取り組みを続ける以前は、子どもと目が合わなかったと言うお母さんでしたが、最近では学校に迎えに行った際にお子さんから目を合わせて微笑むなどの変化が見られるようになったそうです。
また友達との関わりが増えたことや、兄弟に興味を持つようになったこと。そしてお母さん自身も子どものことがかわいいと思えるようになったと言う報告がありました。
プログラム最後では、重度の自閉症の人のケース検討会が行われました。当事者Tさんの紹介があり、続いて問題行動から現在支援の上で困っていることが紹介されました。
事例検討1つ目の課題は、グループホームにおいて多飲水による問題行動について、6人組のグループに分かれ検討課題について意見を出し合いました。
・制止するのではなく「〇〇の後飲みましょう」と伝える
・言葉ではなく首振りなどの非言語コミュニケーションで伝える
・その他の余暇を過ごす方法を考える
などの意見がそれぞれ出ました。
大事なことは、なぜそういう行動をするのか?を考えること。不安や注意引きなど一つ一つ理由を考えていくと、支援者が気付いていなかった答えを引き出せることがあるという事でした。
2つ目の課題は、食べ物を掻き込むようにして勢い良く食べてしまい誤嚥の危険性があるということでした。再びグループごとに意見を出し合いました。
・嫌いなものは食べたくないと本人が言えるようにする
・本人が希望を言える環境・関係性を作る
などの意見が出ていました。
Tさんの苦手な部分にチャレンジしたこと、また支援者側もこれまで気付けていなかったTさんの特性や関わり方を改善したことが良い結果に繋がった。
大きく変化させるのではなく、少しの変化、ハードルを上げ過ぎず、当事者本人そして支援者のモチベーションに繋げて継続することが大切。問題行動だけを見るのではなく、その人を見ることで問題行動がなくなるという事を実感できたという報告でした。
今回レポートを担当していて感じたことは、支援者側の意識を変えてみること、マインドフルになる必要があるのは支援者の方だということでした。
また取り組みとは違う場面で、今まで視線が合わなかった当事者がこちらを見て笑うことがあったという話や、他の人に興味を持つようになってきたという報告が寄せられていました。こういったところに、考える力やモチベーションを引き出すという取り組みが活きてくるのだと実感しました。
レポート:北田 徹