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パンジーⅡのEさんは通所1年目に日中活動の中で集中的にRDIに取り組みました。その時に支援者とどんな活動に取り組んだかを振り返ってみます。
00:00~「番重を運ぶ」
Eさんはすぐにこちらの意図や要領を察してくれて一緒に行うことができました。
途中で番重を持って支援者が立ち止まると駆けつけ、一緒に持ちました。
支援者とともに何かをする時間という意識を本人が持ってくれているように感じます。
00:54~「パズルをする」
最初の段階では一人で行っています。時折支援者の私から手伝うサインを送るが一人でしようとします。
ここで心がけたことはあまり支援者側の手伝いアピールが強くなりすぎないことです。
途中からチラチラこちらを見て意識してくれるようになり手を取ってくれました。
一度こちらが手伝うとEさんもそちらのほうが早いと思ったのか、あまり自分でせずに
頼るようになりましたが、全てこちらがしてしまうのではなくあくまでEさんに
パズルをしてもらうことを意識しました。
03:08~「お茶を一緒に入れる」
ピッチャーを一緒に持つがEさんの手にはあまり力は入っていませんでした。
こちらも力を抜くとEさんがそれに気づき、少し力を入れて持ってくれました。
お茶を入れ終わる前に飲んでしまいそうになりましたが、最後にピッチャーをテーブルに置くところまで一緒にしてもらいました。
二度目は役割を変えてEさんがピッチャーを持って私がコップを持って注いでもらう形にしました。
この日はなかなか集中できていない様子でもっと関わって欲しそうに感じられました。
04:46~「ハンガーにウレタンをつける」
終始支援者の指示が多いのが反省点です。榎本さんは落ち着いて取り組んでいて、支援者側がウレタンやハンガーを持ち替えてもそれにすぐ対応していました。
06:45~「一緒に揺れる」
Eさんはパンジー通所当初はなかなか関係が築けず一人で過ごしてしまうことが多かったように思います。
RDIを取り組むことで日々の活動の中でも支援者を意識してくれることが増えました。
動画のように体を預けてリラックスをしてもらえる信頼関係もできてきました。
今後もともに様々な活動をして信頼関係を作り、それを拡げていこうと思っています。
文:パンジー支援者 横山
その後の様子は「Eさんの変化について(2020年11月17日記事)」に続く。
2018年の4月からパンジーⅡに通っているEさんは今年で3年目を迎えました。
支援学校を卒業して今年で21歳になります。重度の自閉症と診断されています。
通所が始まったころのEさんは私たちとの関係が上手く築けず、服を脱いでしまったり、1人で個室にこもってしまったり、パンジーⅡで過ごしていくうえで課題となることが多かったように記憶しています。軽作業をする上でも私たちに手を握って欲しくて、もっと別の関りが欲しくて自分本位になりすぎて、なかなか軽作業に取り組めないことも多かったです。
そんな中でRDIコンサルタントの池下さんに相談を開始し、何人かの支援者で取り組みを始めました。
支援者とともにお茶をコップに入れたり、物を運んだりを続けていくうちに、椅子に座って軽作業にも取り組むことができるようになりました。最初はどのような支援が必要なのか迷ってしまうこともありましたが、RDIの取り組みを続けていく中で、Eさんは私たちの思いや行動を意識してくれていることがわかりました。
2020年9月現在。以前のように対応を迷う行動はほとんど無くなり、Eさんは共に歩いている支援者が立ち止まると、気遣って立ち止まるなど、今まで以上に支援者を意識するようになっています。
今後もどんどん変化していくEさんと活動の幅を広げたり、自立に向けて共に歩んでいきたいと、強く感じました。
この4月からパンジーに新しく通所を始めるUさん。34歳。
自閉症、アスペルガー症候群、AD/HDなどの広汎性発達障害、
また強度行動障害を持ち、現在は日中に別の事業所へ通所されています。
行動の特性として、多動性が高く同じ場所に座っていることが難しい、
こだわりが強く行動パターンを変える事が難しい、予定の見通しが難しく
落ち着いて過ごせない事が多いといった報告を受けています。
パンジーへの通所を開始する4月に向け、RDI認定コンサルタントである
池下沙祐里さんに取り組みを見てもらいながら、日中で体験実習を始めました。
Uさんが安心して過ごす事ができる環境作り、そして職員間で支援を統一し、
Uさんとの関係を構築していくことを目指します。 パンジー支援者: 北田
「RDI認定コンサルタント 池下沙祐里さんの報告」
今日はUさんの第3回目の実習でした。2回目からは作業もしているそうです。
パンジーでは、RDI(対人関係発達指導法)という自閉症の療育プログラムを
取り入れて日々支援をしていますが、この日もそのアプローチが活かされていました。
ハンガーの作業では、支援者がUさんに単に作業をさせているのではなく、
「ガイドされた参加」でペースを調整しながらしています。
Uさんが一人で作業をすると、どんどんペースが速くなったり、興奮気味になって
しまいますが、ガイドがリードすることで、双方に心地よいペースを保っています。
Uさんのガイドされた参加(ハンガーの作業)
次の場面は、昼食を待つシーンです。
Uさんはお昼が楽しみでそれまでも時々厨房をのぞき込んでいましたが、
作業が終わり片付けが始まると、いよいよ落ち着かず、厨房と作業スペースの間を
行ったり来たり配膳がまだかと気にする様子が見られます。
そこで、作業をしていた支援者と厨房近くで並んで待つことにチャレンジしてもらいました。
Uさん「ガイドされた参加」で並ぶ
RDI(対人関係発達指導法)の「ガイドされた参加」というと何か作業を
しなければいけないと思う方がいるかもしれませんが、遊びの中でも、
日常のルーティーンの中でも「ガイドされてすべきこと」は山のようにあります。
Uさんは、一人ではじっとしていられませんが、支援者と並ぶことで、適切に待つことができました。
RDIでは「edge + 1」(エッジプラスワン)という言葉がよく出てきますが、
“一人ではできないちょっと難しいこと”を、ガイドにリードされてチャレンジし、
少しずつ成長していくというのが、定型発達の子どもたちの中で日々起きていることです。
今回の場合、厨房の前で並んでいた方が気になる食事が近いことが見てわかるので、
Uさんの自閉症の特性から考えても、見通しが持ちやすくよかったと思います。
その後、また別の場面では、別の支援者に誘われて、一緒にカゴを運んだり、
机や椅子を元の場所に戻したり、ヴァリエーションに富んだいろいろな
「ガイドされた参加」の活動をされていました。
Uさん「ガイドされた参加」でカゴを運ぶ
こうした活動を通して、Uさんが人と一緒に動くことや何かをすることの楽しさや
面白さに気づき、世界や人に対する理解の枠組みをアップデートしていくことが、
柔軟性の獲得であったり、将来のQOLにつながるのだと思っています。
少し遅くなりましたが、第6回RDI実践報告会の報告です。
今回は3部構成で、参加者31名で行われました。
第1部は、おなじみ池下さんの参加型の講義。基本から応用まで「経験共有のコミュニケーション・応用編」。第2部は実践課程の一進一退感や登山の活き活きとした様子が興味深かった「大人の自閉症・知的障害を持つ当事者との取り組み:一歩一歩ゆっくりと」。
第3部は、岸本先生のRDIコンサルタントになるきっかけも含め、RDIの目指しているところや、実践の方法をくわしくわかりやすい「RDIの実践と課題」。
3本とも非常に興味深く、面白いものでした。そのなかで印象に残ったことは、脳は常にダイナミックで変化している。どのようなタイプの思考(量ではなく質)をしたかによりどのように脳が発達するのかが決定される。そして永遠に変化し続ける。ここを押さえることで、RDIが決して子ども限定でなく、大人や誰に対しても有効で、親や支援者がRDIをするきっかけになったり、続けていく根拠になるのだろうと思います。
そして、そのことを踏まえることで、RDIの目指すゴールに、上手くいかないことがあっても、あきらめずに向かっていけるものと感じました。RDI実践報告会は今回で一区切りになりますが、RDI初体験の人にはスタート、経験者には再スタートを切るために、締めくくりにふさわしい講義だったと感じました。
大人の実践報告で使用した映像、希望のつばさ第14回はこちらから。http://pansymedia.com/
今回のテーマは、「マインドセット」
関わる側の人がどういった心構えをもってお互いに成長できるかを考える講座、実践報告と参加者で一緒に考えるグループワークが行われました。
RDI認定コンサルタント池下沙祐里さんによる講座「“ガイドされた参加”のマインドセット」ではいきなり「“こころ”って身体のどこにあるの?」という哲学的な話で始まりましたが普段の生活の中から見てとれる“関わり”の中でどういった気持で接しているか、それがどういう形で表れるかなどわかりやすく説明されました。
また「成長促進型マインドセット」と「問題予防型マインドセット」の違いについて、「新しいチャレンジを試みつつ一緒に成長していくこと」と「現状の問題を回避するために予防線を張ってしまう」という2つのマインドセットについても講義が進められました。
講義後半では「マインドセット判定ゲーム」として参加者の方々が質問に答えて自分のマインドセットを振り返るということも行いました。それぞれの結果について評価をしていき自分がどういった心持ちで接しているか、どう表現しているかを考える良いきっかけにもなりました。
実践報告は2例。1つ目は今年からパンジーに通所されている知的障害と自閉症スペクトラム障害を持つ成人男性の
Kさんとの関わりの中で支援者のマインドセットにスポットを当てて報告がありました。
最初は支援者の緊張感が伝わりKさんも落ち着けず、支援者がフォローしようと指示を出してしまうことでさらに関係性が悪化してしまうという悪循環でした。まだ関係性が築けていないうちに指示を出してしまいKさんも受け入れられない状況です。
次に「同じ場所で一緒に過ごす」ということを目的に過ごし、その中で一緒にブロック遊びをしました。Kさんも少し落ち着いた様子で一緒の空間にいることが出来ていますが、ここでもまだ支援者が指示を出してしまっています。どうしても関わりを持とうと焦ってしまうようです。
最後はとにかく「指示を出さない」をテーマとして一緒に過ごします。すると支援者もKさんを意識しすぎることがなく自然に関われました。Kさんもさらに穏やかな表情が伺えます。
支援者も「最初は関わりが難しいと思っていてついついこちらの要求を伝えるために指示を出してしまっていた。心の持ち方を変えることで、その姿勢がKさんにも伝わり関係性が変化することで自分でも出来るんだと思えるようになった」と言っています。
2つ目の事例報告はきっずパンジーに通ってい自閉症のTくんと支援者の関わりです。
Tくんとバス停からパンジーに向かうまでの道のりでの関わりについてです。
Tくんは他の子ども達と一緒に歩きますが自分のペースで歩いたり急に走りだしてしまう事がありました。支援者のリードで一緒に歩く事を通して「ガイドされた参加関係」を作ることを目指します。
まずは他の子たちの後ろから支援者と一緒に歩きますがこちらも支援者が緊張しているのがビデオからも伝わってきます。会話もTくんがコントロールしています。と急に走り出してしまいました。
次はもう少し緊張感を持ち、しっかりと横についてゆっくりと歩く事を心がけて挑戦です。
まだお互いの距離感や信頼関係がかみ合っていないようですが、少しづつ一緒に歩く事が出来るようになってきました。
三度目にはお互い余裕が出て来ています。「一緒に歩いている」という感覚を持てて来てるのではないでしょうか。
最後にグループワーク「“マインドセットに”気づこう」です。
参加者で4つのグループを作り3つの事例で「その時どうするか?」「どう考えたから、そうしたか」「今後どうしようと思うか」をグループ内で話し合いました。
それぞれ親視点、支援者視点、自分視点といった3つの事例について話し合いました。
1つ目の親視点。「楽しみにしていたUSJに連れてきたが、子どもが待ち時間に耐えられずパニックに!!」
2つ目の支援者視点。「明日から偏食が多く、気分が乗らないと食事が進まない当事者の食事介助担当になった」
3つ目の自分視点。「恋人と些細なことから大げんかし、別れ話に発展してしまった」
それぞれ活発な意見があり、この中でも成長促進型と問題予防型の意見がたくさん出され大変盛り上がりました。みなさん日頃の生活の中で色々と挑戦していることが話され貴重な意見を聞けました。
今回テーマ「マインドセット」について、関わる側が変わることで状況が変わってくることが良く分かりました。その中で如何に「成長促進型マインドセット」を持てるかがこれからのチャレンジだと感じました。
レポート:北村 賢治